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旅行のたびに歯ブラシを忘れる人間の、パッキング再考

前泊のホテルでフロントに歯ブラシをもらいに行くたびに、自分のパッキング能力を疑ってしまう。あの徒労感を減らすために、僕がやめたことと続けていることをまとめました。

金沢のホテルで、夜23時すぎにフロントへ歯ブラシをもらいに降りた日のことを、たまに思い出します。

エレベーターの中で、自分はもう何回これをやっているんだろう、と数えていました。ざっと過去2年で5回くらい。歯ブラシだけではなくて、ある日は目薬、別の日はスマホの充電ケーブル、温泉旅行のときは老眼鏡。毎回ちがうものを忘れていて、忘れ方の引き出しだけが妙に豊富になってきている気がします。

旅行の前夜って、たぶん多くの人にとってこういう夜だと思います。出発の翌朝のことしか考えられなくて、目の前のスーツケースに入れるべきものを、たぶんぜんぶは思い出せていない。

今日書きたいのは、その「思い出しきれない夜」の打率を、半年くらいかけて少しだけ上げた話です。完璧なリストにも便利グッズにも辿り着かなくて、結局のところ続いたのは雑なやり方ばかりだったので、それを並べておきます。

前夜の自分には判断力がない、という前提から始める

これに気づくまでに、3年くらいかかりました。

旅行の前夜に荷造りをするのって、わりと無理筋なんですよね。仕事から帰ってきて、明日の朝の支度もあって、頭の半分は「明日の天気は」「電車は何時のに乗るんだっけ」で埋まっている。その状態で、過去の旅行で何が必要だったかを思い出すのは、けっこう難しい仕事です。

それなのに、毎回その夜にゼロから「えーと、歯ブラシ、充電器、コンタクトの保存液…」と組み立てていました。10回やって10回、何かを落とす。これを「自分は注意力がない」で説明していたのですが、たぶん違って、構造の問題だった気がします。

判断力がない時間に判断させない、というのが入口でした。

帰ってきた翌日に、リストを書く

地味な話なんですけど、いちばん効きました。

旅行から帰ってきた翌日に、今回持っていったものをそのまま箇条書きにします。スーツケースから物を出しながら、出した順にメモに書いていく。「下着3、シャツ2、ジャケット1、充電器、変換プラグ、目薬、市販の風邪薬、ジップ袋(汚れ物用)」みたいに、温度感としてはレシートに近いです。

書き終えたら、行き先のタイプ別にフォルダ分けしておきます。「国内2泊出張」「家族と1泊温泉」「夏のキャンプ1泊」くらいの粗さでいい。次に同じタイプの旅行があったら、そのリストを開いて、足りないものだけ足す。

これだけで、前夜の自分が「ゼロから思い出す」作業をしなくてよくなりました。判断力のある翌日の自分が、判断力のない前夜の自分に手紙を残しておくイメージで運用しています。

コツは、帰ってきた当日ではなく、翌日にやることです。当日は疲れていて雑になります。翌日の朝、コーヒーを飲みながら荷ほどきの続きをして、出てきた順に書き留める。一週間あいだを空けると、もう何を持っていったか曖昧になっているので、翌日が限界でした。

忘れて買ったものは、必ず末尾に足す

これは続いている習慣のなかで、いちばん即効性があったものです。

旅先で「あ、これ忘れた」とコンビニやドラッグストアに駆け込んで買ったものは、帰宅後にテンプレの末尾に追記します。歯ブラシ、目薬、ヘアゴム、ライトニングケーブル、絆創膏、虫よけ。一回忘れたものは、まあ次も忘れます。

不思議なんですけど、リストの末尾に「歯ブラシ(前回ホテルで頼んだ)」と一行書き加えてあると、出発前夜にちゃんと目に入るんですよね。本文に最初から書いてあるよりも、追記のほうが視線が止まる感じがします。失敗の記録のほうが、リマインダーとしては強い。

うちは STOQ というアプリの「持ち物テンプレ」機能で管理していますが、これは紙でもメモアプリでも同じだと思います。ツールはどうでもよくて、「忘れた事実を次に渡す」という運用のほうが本体です。

余談: 前々日の夜に「とりあえず」詰める

前夜に詰めるのは、もうあきらめました。

代わりに、出発の前々日の夜に、いったん雑に詰めてしまいます。完璧でなくていいことにする。下着の枚数が違っていてもいいし、ジャケットを入れ忘れていてもいい。とりあえず形にする。

そのうえで、前日の夜に一回だけ蓋を開け直します。一晩寝ると、自分の詰めたものが他人の荷物みたいに見えるので、「あ、充電器入ってない」が自然に目に入る。出発の朝に気づくと詰むけど、前日の夜に気づくぶんには、まだ間に合います。

「2回開ける」って、それだけのことなんですけど、夜のホテルで歯ブラシを取りに降りる回数がはっきり減りました。

前夜のリストを書き直さない、というのが一番効いた

半年やってみて、いちばん変わったのは、忘れ物の数そのものよりも、前夜の机の上の風景でした。

以前は、紙とペンを出して、頭をひねって、思い出しながら書いて、書きながら不安になって、結局スーツケースを2回開け直していました。いまは、過去のテンプレを開いて、今回の差分だけメモして、終わり。10分かからないことが多いです。

劇的に忘れ物がゼロになったわけではないです。月1回くらいあった「やってしまった」が、3か月に1回くらいになった、という程度。それでも、ホテルのフロントで「歯ブラシいただけますか」と言わなくていい夜のほうが、自分には合っている気がします。

旅行が好きで行くものである以上、前夜が静かなほうが、翌朝もたぶん少し穏やかになります。完璧なパッカーになろうとは、もう思っていません。雑な引き継ぎを未来の自分に残しておくくらいで、いまはちょうどいいです。

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