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賞味期限切れの豆腐を、また黙ってシンクに流した話

冷蔵庫の奥から、3日過ぎた絹豆腐が出てきました。封を切るかどうか数秒迷って、結局そのまま流す。あの罪悪感を減らすために、僕がやめたことと続けていることを書きます。

水曜の23時、冷蔵庫の奥に手を伸ばしたら、未開封の絹豆腐が出てきました。

ラベルの賞味期限は日曜日。3日、過ぎていました。封を切って、匂いを嗅いで、まだいけるかもしれないと一瞬思って、結局シンクに流しました。パックの底からとぷん、と落ちる音と、排水溝を流れていく白い液体を見ながら、また自分はちゃんと暮らせていないなと、軽く凹みました。

うちの冷蔵庫では、こういうことがほぼ毎週起きていました。豆腐、もやし、半分残ったキャベツ、買ったことを忘れていた納豆。レシートをまとめて見返すと、毎週500円から1000円ぶんくらいは、買って、忘れて、捨てている計算でした。

これを少しでも減らしたくて、半年くらいいろいろ試してみました。今日は、その中で続いているものだけ、雑に書き並べておきます。完璧な献立管理とか、ゼロウェイストの誓いとか、続かなかったものは入っていません。

「もったいない」では、自分は変われない

最初はぜんぶ罪悪感でやろうとしていたんですよね。

冷蔵庫のドアにメモを貼ったり、SNSの「フードロスゼロ生活」みたいな投稿を眺めたり、ノートに食材の在庫を書こうとしたり。2週間で、ぜんぶやめました。

たぶん理由はシンプルで、自分は「もったいない」という言葉に、もう慣れすぎていたんだと思います。子どものころから何度も聞いてきて、聞き流す筋肉がいつのまにかついている。罪悪感で自分を動かそうとすると、心の表面でつるりと滑っていく感じがありました。

変わったのは、もったいないをやめて、 「ただ見えていなかっただけ」 と思い直してからです。

冷蔵庫の中身が頭に入っていないから、同じものを買う。奥にあるものに気づかないから、期限が切れる。怠惰でも、意識が低いわけでもなくて、ただ見えていない。それだけのことでした。罪悪感より、こちらの言い方のほうが、自分には効きました。

手放したもの

在庫を見えるようにしようと決めてから、手放したものがいくつかあります。

まず、週末のまとめ買いをやめました。土曜の朝に1週間ぶんを一気に買うのは効率がよさそうに見えて、自分の場合は「読み」が外れたぶんがそのままロスになっていました。月曜に作るつもりだった料理が、火曜の残業で消える。水曜にやる気がなくなって冷凍ピザを食べる。気づくと木曜の冷蔵庫には、使われなかった野菜が黙って並んでいる。今は、3日ぶんずつ平日に小さく買い足す方式にしています。

それから、特売の箱買いをやめました。納豆3パックが98円のときに、つい2セット買ってしまうやつです。冷蔵庫の容量と自分の消費スピードを超えた瞬間に、結局1セットは賞味期限を迎える。安くなったぶん以上に捨てているので、これは節約じゃなくて、ゆっくりお金を捨てる作業だったんですよね。安さの誘惑に勝つというより、棚のサイズに従うことにしました。

最後に「あとで使うかも」をやめました。半分残った野菜、開封済みの調味料、いつかのために冷凍した鶏むね肉。数えてみたら、その「あとで」のほとんどは来ませんでした。来ない予定は最初から在庫として数えない、と決めたら、冷蔵庫が急に広くなりました。

買い物前の3分

地味なんですけど、いちばん効いた方法を書いておきます。

スーパーに行く前に冷蔵庫を開けて、上段、野菜室、冷凍庫と3枚スマホで撮る。それだけです。整理してから撮ろうとすると面倒で続かないので、雑に開けて、雑に撮る。多少ピンボケでも、自分が見て分かれば十分です。

レジ前で「豆腐あったっけ」と迷ったとき、写真を開けば数秒で答えが出る。これを始めてから、ダブり買いがほぼ消えました。月に2〜3回あった「同じキャベツが家にもうあった」事件が、ここ3か月で1回しか起きていません。

3分の確認で減るのは、「あったかも、念のため買っておこう」の1〜2品です。たった1〜2品なんですけど、これが減るだけで、翌週の冷蔵庫の混雑がはっきり違う感じがします。

余談: 金曜は買わない日

もうひとつ、続いているのが「金曜は買わない日」というルールです。

週末の買い出しの前に、冷蔵庫の在庫だけで一食作る日を決めました。曜日は何でもよくて、自分の場合は金曜の夜です。半端に残った野菜と豆腐、冷凍庫の鶏もも、開けかけの味噌。これだけで何かしら作ります。失敗してもよいことにしている。コンソメで煮るか、卵でとじれば、だいたい食べられる味になります。

これを入れただけで、土曜の朝の冷蔵庫がだいぶ軽くなりました。次の買い物で買いすぎる量も、自然と減ります。在庫を消費する日を週に1回置くと、冷蔵庫が呼吸する感じがあるんですよね。

期限の近いものから、献立を決める

以前の自分は、食べたいものを決めてから冷蔵庫を開けていました。今は逆にしています。冷蔵庫を開けて、期限が近いものを2つくらい選んでから、それで作れるものを考える。

このやり方に変えてから、レシピを検索する頻度が増えました。「キャベツ 豚バラ あと3日」みたいな、雑な検索です。でも、これが意外と楽しい。手元にあるものから始める料理は、計画通りに作る料理より、少しだけ即興っぽくて、気分が軽いんですよね。

うちは在庫アプリに残量メモを置いているけど、紙の付箋でもスマホの標準メモでも、結果はあまり変わらない気がします。「不足したものだけ書く」「期限の近いものから出す」というルールがあれば、ツールはどれでも回ります。

我慢じゃなくて、整理だった

半年続けてみて、食材を捨てる頻度は体感で半分以下になりました。

劇的な変化じゃなくて、月に5〜6回あった「うわ、これダメだ」が、2〜3回に減ったくらいです。ゼロにはなりません。それでも、シンクの前で立ち止まる回数が確実に減ったのは、思っていたよりずっと気分が良いものでした。冷蔵庫を開けるとき、あの「奥に何が眠っているんだろう」というかすかな緊張が消えて、ただの台所になった気がします。

食品ロスを減らすって、我慢の話だと思っていました。やってみると、むしろ手間が減って、献立に迷う時間が短くなって、財布も少しだけ楽になる。我慢ではなく、整理の話だったんだなと、いまは思います。

豆腐を黙ってシンクに流す夜が、月に一度でも減ったら、それで十分な気がしています。

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